「iPhoneやiPadをターゲットにした開発は経験がある。ただし、HTML5によるSafariアプリだけどね」
「なぜ、HTML5なの?」
「その理由は、書いたコードがAppleに囲い込まれるなんて金輪際御免だという理由の他に、ネイティブアプリはMacを買わないと書けないという理由も大きい」
「数万円払わないと試せないなら、遊びでは試せないってことだね」
「そうだな。しかし、遊びでは済まない状態になったのでしょうがないので、Mac miniを買った」
「それで?」
「xcodeがさっぱり分からない」
「xcodeって何?」
「統合開発環境」
「それなら別に難しくないだろ。Visual Studioはいつも使ってるし、Eclipseだって前に試してるだろ? 使えなかったという話は聞かないぞ」
「そうだな。でも、xcodeはクセが強くて分かってしまえば良いのだが、分かるまでが難しい。かなり発想の飛躍を要求する」
「飛躍するのは得意じゃないのか?」
「他人の飛躍に合わせるのは難しいよ」
「でも、それでめげる君とは思えないぞ」
「そこだ!」
「どこどこ?」
「今回最大の問題だったのはネットが役立たずだったということだ」
「なんで?」
「検索してxcodeとかiOS開発の情報を探すだろ?」
「うん」
「ところが、Webページで解説されているその機能が存在しない」
「君のxcodeは欠陥品?」
「そうじゃない。うちのxcodeは落としたばかりの最新版。Webページで解説されているのはかなり古いバージョンばかり。操作が変更されて同じやり方が通用しなくなった情報が多いが、そこに触れている情報はとても少ない」
「えー」
「日本人は熱しやすく冷めやすいというが、良く分かる。一度解説を書いたらおしまい。継続してフォローアップして手直ししておく手間には冷淡だ」
「じゃあ、xcodeに手こずったというのは、xcodeそのものに手こずったというよりも、ネットの情報に手こずったわけ?」
「そうだな。実際、日経ソフトウェア7月号の解説を見たらすぐ分かった。同じバージョンだからだ」
「分かった。毎月店頭に並ぶ雑誌なら、扱ってるバージョンも同じってことだね」
「そう。公開したらそのまま何年も残るネットとは違う」
「じゃあ、この問題ってAppleはダメだね、というオチじゃあないの?」
「Appleではなくネットの問題だ」
「どうしてそう言いきれるの?」
「だって、IIS 7の情報を探すとIIS 6の情報ばかり出てきて辟易したという経験もあるし」
「IISはMS製品か!」
というわけで §
「というわけで、日経ソフトウェア7月号に簡単なxcode入門が載っているのに気付いてそれを見ながら作業したらアッという間にここまでできた。ボタンを押したらログに文字列を書き出すだけ……なんだけど、昨日はそれぐらいのことができなかった」
「写真も貼ってあるよ」
「Samba経由でJPEGファイルを転送して貼り付けてみた。それだけ」
「あくまで母艦はWindowsなんだね?」
「そうそう。これだってVNC経由でWindowsマシンからリモート操作してコンパイルと実行を行っているわけだし」
「えっ?」
「スクリーンショットはVNCの画面をWindowsで撮ってるよ」
「ひ~」
まとめ §
「それで君はxcodeをガンガン使ってiPadアプリを書いていくつもり?」
「んー。たぶん、それは無い。xcodeで書く予定のコードは1つだけで、しかもアプリとして売る予定じゃない」
「どうして?」
「スマホ向け主力開発言語はHTML5でそれは揺るがない。xcodeとかObjective-Cとかに関わる暇があるならなら、jQuery mobileを極めたい。Phone Gapという線もあるけど」
「じゃあ、Macの存在意義って?」
「ビルドマシン。ビルドして検証してマーケットプレイスに提出するためのマシンだな」
「たったそれだけ?」
「たったそれだけのために無駄な出費を強要する嫌な会社だよ、Appleは」
「嫌なのになぜ対応するんだよ」
「最終決定権は客にあるのがプロだから」